2018年エコプロダクツ展からアクティブラーニングの素材を探す その2

今回も、アクティブラーニングで使える課題となる展示を紹介します。

アマモは海のゆりかご

「鉄腕ダッシュ」でおなじみの海洋専門家、木村尚(きむらたかし)先生のプレゼンもありました。アマモは海のゆりかごでアマモの林があることで、隠れ場ができ、魚だけでなく多くの生き物の生息・繁殖場となっています。ところが、人間の経済活動のために、アマモの藻場は埋めたてられたり、汚染により減少しているのです。プレゼンにはたくさんの人が聞き入っていました。木村先生も東京湾の館山で減少する藻場の再生にも取り組んでいるようです。

サンゴ礁でも藻場は重要

私も、ジョルダンのアカバ湾でサンゴモニタリング指導をしていた時に、サンゴ礁の合間に砂地で藻場があり、アマモが生えているのですが、そこが、岩場でなく網を仕掛けやすいことから漁師が目の細かい定置網を張り、根こそぎ生物をとっていました。彼らの言い分は、サンゴ礁を壊しているわけでないから、ここなら良いだろうというスタンスでした。しかし、そうではなくて、藻場があるから、サンゴ礁の周りに生息する生物も生まれてきているのだということを、理解してもらうために、水中の生態をとらえたビデオをつくり発表しました。その結果、そこでの定置網はなくなりました。生態系というのは周りのすべての環境がつくりあげているのだということを知ることが重要だとわかりました。

地下3000mの砂岩層に地球温暖化物質のCO2を閉じ込める、CCS

気になったのがCCSですCarbon Dioxide Capture and Strageの頭文字をとったものですが、地球温暖化対策の切り札と言っていました。原理は、CO2を製油所や発電所や焼却施設などから分離してとりだし、それに圧力をかけて液状の臨界状態にして、地中の砂岩層の中に吹き込むということです。現在実験プラントを北海道の苫小牧市に稼動させています。CO2の99%を回収できるそうです。これを228気圧まであげて3000メートルぐらいの海成の砂岩層の中に封じ込めるのだそうです。
写真にもあるように、砂岩層は青い色を付けてある空間があり、そこには水分が入っているのですが、水を追い出しCO2を代わりにそこに入れてしまうということでした。上下には泥岩層があり、こちらは隙間がないので、一度封じ込めれば出てこないのだそうです。2020年ごろまでには実用化するということでした。

アメリカではシェール石油の掘りだしにこのような技術をすでに使っている

この技術は海外ではすでに実用化されているところもあるのですが、排出するCO2量に対してこのプラントでは3年間30万トン程度で使えるようになるには1億トンレベルが必要でまだ実験レベルです。アメリカでは石油増進回収、いわゆるシェール石油掘り出しにCO2を圧入することで一石二鳥なので、payするのですが、日本ではそんな油田はないし、圧入そのものは利益をうみだしません。大きなコストがかかるのにそれでもやるのかというのは疑問でした。また、地震が心配です。日本にはそこらじゅうに活断層が存在します。地震で上の泥岩層が割れたら、CO2が噴き出すことになります。温暖化は待ったなしですが、この方法は最善なのか考えさせられます。アマゾンの森林伐採や海の開発によるサンゴ礁の破壊を止める方が効果が高いのではとも思います。このメリットとデメリットを素材にぜひ議論のテーマにしてください。

発砲スチロールのリサイクル率は90%を超えている





皆さんが良く知っている、発砲スチロールのことも紹介します。発泡スチロールは98%が空気で、燃やすと水と二酸化炭素になるので、ダイオキシンなど有害物質はでないそうです。断熱性が高く、直接炎に充てなければ400度ぐらいまでは燃えないのだそうです。例えば電熱線の上に少し離して発泡スチロールの板をおいても燃えないそうです。これは知りませんでした。また、卵を1mぐらい上から落としても割れない弾力性があります。実際に実験させてもらいました。確かに割れませんでした。文化祭などで実際に演示すると面白いですよ。

リサイクル率90.2%で、石油から作った原料は、中に発泡剤が入ったビーズを蒸気で加熱し50倍に膨らませて作ります。つまり原料は2パーセントで省資源性のエコ製品なのです。燃やすと黒いけむりが出るのは有毒ガスではなく不完全燃焼のためだそうです。

写真は、鍋の中の蒸気で膨らんだビーズです。リサイクルで回収した発砲スチロールは圧縮すると、発砲がつぶされ、「スチロールインゴット」と呼ばれる状態になるのです。これで100分の1にまでなるため保管、輸送などがたやすくなるのです。実に便利な素材です。持ってみたらずっしりとした重さがありました。

レアメタルを使わないプラスチック素材の柔軟性のあるソーラーパネル

面白いものを見つけました。

LNESという会社の製品ですがソーラーセルだというのです。これはシリコンの結晶ですかと聞いたら、そうではないというのです。プラスチックの中に挟まれていて、自由自在に曲げられる素材なのです。プラスチックソーラーだというのです。

いろいろ聞いたのですがまだ発表できないとのこと、残念でした

素材は何か?、何V出るのか?、電流は?と聞いたのですが、まだ発表できないということで教えてくれませんでした。LNESは日本ゼオンという化学会社の関連会社です。ナノカーボンを用いレアメタルを使うことなくエネルギーをつくることができるというのです。これが製品化されるとライフスタイルに合わせたソーラーになりそうです。レアメタルを使わないというところが興味深いです。さらにこの素材による畜電池も考えているということで、ウェアラブルソーラーと電池もできるのではないかと思いました。(斉藤宏)