サンゴファシリテーション「サンゴモニタリングを通じて気候変動を考え行動を起こそう」

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開発と地球環境
拓殖大学の国際開発教育ファシリテーター養成コースの講義「開発と地球環境」とグループディスカッションを担当してきましたので、報告したいと思います。
このコースはオープンキャンパスで実施されているため、学生だけでなく、外部の社会人が多く参加しています。年齢層も20代前半から50代後半までと幅広く、今回のメンバーの平均年齢は35歳です。受講者年齢層分布図をご覧ください。受講者の職域は教員や公務員、国際協力組織等、グローバルな社会や人材に接していて、すでに職場において中堅のキャリアを持ちさらに自身のスキルアップをしようというモチベーションの高い人たちが応募してきています。

もともと力がある人たちの集まりですから、中途半端な講義には納得しない手ごわいメンバーの集団です。それだけに、ここでの反応を分析することで、ファシリテーションの流れを組み立てるうえで重要な要素を得ることができます。

ファシリテーションの効果を数値化する
私はサンゴモニタリングの研究者ですが、受講者の皆さんは、それぞれ自分の仕事に対するスキルは高いが、おそらくサンゴの生態については、詳しい話は初めて聞くことになるだろう人たちで、今回の講義の目的は理系、文系を問わず、おそらく知らない生物の生態に気づき、地球にとって大切な生物であることを理解し、保全のための行動を考えてもらうという、極めて難しいミッションなのです。しかし、ファシリテーションの使命はいつだってこんなミッションです。世界で解決しなければならない課題はほとんどがMission Impossibleです。かかわるのは専門家ばかりではありません。課題現場のstakeholder(ステークフォルダー)すべての参加の中で解決への糸口を見出していく必要があるのです。

そこで、受講者には私が話していく話の要素ごとに、興味を抱いたレベルを1から5段階までチェックしてもらい、さらに変容が高かったものには、「気持ちに変化」「何かやってみたい」にチェックしてもらいました。これにより、講義のどの部分が受講者の心に刺さるか数値化を試みました。「気持ちに変化」は6として扱い「何かやってみたい」は行動へのつながりと考え7としました。

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講義の内容詳細
講義の流れは、以下の要素をスライドとしました。
①「講師自身の経歴」教員をやりながら青年海外協力隊でセネガルでの陸上動物環境保護、シニアボランティアで紅海、アカバ湾でのサンゴモニタリング指導を現地で実施してきたこと。

②「サンゴの美しさ」サンゴ礁のトロピカルフィッシュたちの背景としてではなく自然の美しさに気づいてもらう。ビジュアルでも見せる。

③「サンゴの役目について」
A)5億年も前から、CO2を炭酸カルシウムとして固定してきたこと、人は今それをコンクリートとして建物の柱や壁にしている。つまりほとんどの人がサンゴにお世話になっている。

B)人間が地球上に生れていない時代はサンゴは海面上昇に対してサンゴ礁を成長し自然の防波堤を築き島を守ってくれた。

C)美しいクリアーな海は栄養がないためで、本来、魚は集まらないのだが、サンゴ礁が養分を排出し生態系の中心をなす。

D)ダイビングをはじめとする観光産業にとって資源。

④「地球の大気の組成」地球の地質時代の大気はCO2に満ちていた、それを酸素に替えたのは水中においてはサンゴのような種類の生物の石灰化作用の力によるところが大きい。

⑤「ツバルについて」サンゴ礁によって作り出された島が、人が住み開発が進み、さらに地球環境変動による海面上昇により水没しつつある。

⑥「海洋のクロロフイル」本来魚の漁場は深海から栄養元が供給される緯度の高い濁った海で、植物プランクトンが多く発生しクロロフイルが多い。サンゴ礁は栄養源のない海に栄養源を放出し魚を集めてくれている。

⑦「褐虫藻」サンゴに共生している藻類でこの共生によりサンゴは大量の養分を供給されている。

⑧「サンゴの経済的価値」国連環境計画(UNEP)が調べた価値は世界で300億米ドルという巨額の価値になる。

⑨「世界白化現象」1998年ウィルキンソン博士により世界規模のサンゴ白化が報告された。博士によると今後20から30年の間にサンゴは壊滅的な方向に向かうと言われている。

⑩「白化の原理」サンゴと共生している褐虫藻は茶色に見えるが、これがサンゴ表面からいなくなるとサンゴの石灰質が透けて見え白く見える。

⑪「モニタリングの必要性」白化すればだれにもわかるが、それまでの変化は目視では判断が難しい。数値化し変化を調べる必要がある。しかしサンゴは世界中にあるわけではない、ある場所は赤道に近いエリアで、それらの国は開発途上国や小島嶼開発国が多い。先進国のように予算やシステムが整っていない。

⑫「様々なモニタリングの方法」アメリカ海洋大気庁NOAAが宇宙から海面表層の水温を監視してデータを自由に使える形で公表している。これにより25度から29度のきわめて狭い温度範囲で生活しているサンゴの危機を知ることができる。サンゴを水中でマクロ撮影することでサンゴに共生している褐虫藻の分布密度を可視化できる。スポーツダイバーがカラーチャートでサンゴの色を比較記録することで色の変化をモニタリングできる。

⑬「講師のモニタリング方法と研究」褐虫藻の密度がサンゴの栄養状態と相関することから、水中で褐虫藻が持つクロロフイルを光学的に可視化する技術を開発した。途上国での活用を目的とし、精度を高め低コストで、誰でも使えるシステムとして供給できるようにさらに研究を深めている。研究のための研究ではなく、地球の未来のため世界気候変動に立ち向かう研究である。

⑭「グループ課題」〇〇参加型モニタリングプロジェクトを実践的にアイディアをだし組み上げてもらう。

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受講生の考え出したプロジェクト
1時間で講義を行い、残りの1時間でグループ活動です。講義の内容が盛りだくさんでまだまだ説明したい部分がありました。しかし、グループディスカッションに入ると、さすがにここまでにファシリテーションの基本や手順を学んできているため、役割分担や手際がとても良かったです。拓大のファシリテーション講座の質の高さを納得できます。

結果として出てきたプロジェクトを紹介しましょう。

■会社の部署でペーパーレスコンペにする。減らしたお金は寄付

■学校の給食で残飯減らし活動コンペにする。

■ゴミの回収と再生自宅で毎日数量化する。

■ほたLOOKプロジェクト、蛍の数と水の濁り周りの植生をモニタリングする

■PM2.5を気象庁WEBからモニタリング、黄砂も収集し顕微鏡で観察

■ゴミの点数化でポイント化する捨てたゴミの数量を家族ごとに人数で割りCO2に換算CO2の見える化、小学生も参加できる

■私が払うコストと地球が払うコスト電気、ガス、ガソリン、水等すべてをCO2量に換算地球が困っていることに気づくモニタリング

■周りの放射線量検出、海岸のごみ拾いとゴミのモニタリング、サンゴを見に行く 他人事を自分のこととして考えることになる。

発表されたプロジェクトを見てもらうと分かるのですが、自分自身の生活に関連し科学的な根拠にもとずくデーターをモニタリングし、参加者誰でも実践可能なプロジェクトを考えてくれました。
モニタリングは少しでも早く始め、平常値を知らなければなりません。平常値が分かれば変化に対応できる時間的な余裕ができます。その意味から、今回のような身の回りでできるモニタリングプロジェクトは効果的です。それだけでなく、分かりやすいプロジェクトは参加してくれた人を変容させます。

そこが重要です。誰かがやってくれるのではなく、自分のこととして活動することは、さらにほかの人々への波及力を持ちます。やはり変容が行動に結びついていく必要があります。
アイデアとしても「ほたLooKプロジェクト」は面白いです。蛍の生息を水の濁りや周辺の植生との相関をモニタリングし調べていくのは、参加者にとってもわかりやすく、自分のこととして考えていくことでしょう。
また、現在スマホにも様々なアプリがあるのですが、水、ゴミ、電気、ガス、ガソリン等を自動的にCO2の量に換算してくれるのです。これは、ぜひ家庭でも使ってほしいと思います。CO2の重量に換算すると如何に大気の中に温暖化ガスであるCO2を放出しているか分かります。気づくことが次への活動につながります。CO2の放出量が減れば温暖化も緩和され、サンゴの生活も守られることにあるからです。

 

受講生が受けた人ごとの変容の強さ分布
今回のファシリテーションを受講してして、受講者20名のアンケートから、前に述べた14項目の講義要素につて1から7までの興味や変容を受けた人ごとの平均値を度数分布で表してみました。平均値として1から7までの度数分布をグラフにしました。
これを見てもらうと、ほぼ正規分布を示しているため、今回の受講者が偏っていないことが明らかです。アンケートの普通は3段階ですが、今回は5段階に最も多い分布が出ています。これから今回の講義は多くの受講者に変容をもたらしたといえるでしょう。

講義のどの部分で変容を受けたのか
それでは、講義の中のどこで変容を受けたのか分析してみましょう。
最後のグラフを見てください。今回の講義の中での14項目の要素です。それぞれの要素の中で、特に強く説明した部分は上記講義の流れをみてください。

受講者がチェックしたレベルを平均したものを強いものから降順で並べました。興味深い結果ですが、今回の講義は理系の知識も満載です、理科、地学などの授業でも使える内容です。ここで変容の平均値4.5で講義要素を分けると、それ以上の項目要素は
サンゴの美しさ4.5、サンゴの経済的価値4.5、褐虫藻4.8、世界白化現象4.9、モニタリングの必要性4.9、講師のモニタリングの方法と研究4.9、サンゴの役目について5.2、グループ課題5.3となります。

これらの項目はサンゴの美しさ(感性を刺激する項目)や、サンゴの経済的価値(自分や人間活動との関係)、褐虫藻(顕微鏡映像やマクロ映像による具体性)、世界白化現象(現実に迫る危機の認識)、モニタリングの必要性(科学的対応による数値化)、講師のモニタリングの方法と研究(実体験ではないが活動のリアリティー)、サンゴの役目について(自分とのつながりの明確化)、グループ課題(実践活動)として考えられ、いわゆるアクティブラーニングの学習定着率の高いラーニングピラミッドに於ける下部に位置する項目に近いことがわかります。逆に4.5未満の項目は知識的なものが多く、興味に関しては知っている人と初めて知った人によったと考えられます。

講義、ファシリテーション引き受けます
いかがでしょうか、ファシリテーションの効果は学習定着率から考えても大きいことが分かります。しかし、ここでは評価はできませんが、グループ活動のコミュニケーションにより、多様性が広がります。協同作業はその他のコンピテンシー改善にも効果が高いと言われます。
グローバル人財リサーチでは今回のテーマに限らず様々なテーマでのファシリテーションを実施することができます。対象は学校、会社、学生、社会人等問いません。対象に合わせたファシリテーションや講義を行います。ご要望等ございましたらご連絡ください。アレンジいたします。(斉藤宏)

 

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