10回目を迎え望まれる役割が明らかになってきた
グローバル教育コンクールは、平成16年度に外務省主催で「開発教育/国際理解教育コンクール」の名称で始まり、21年度(第6回)に名称を「グローバル教育コンクール」に改め、23年度(第8回)からはJICAが主催となり継続しているコンクールです。2013年で10回目10年たったことになります。 外務省のODAページの中に過去第7回までの入賞作品が記録、掲載されています。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/edu/contest.html その後の作品はJICA地球ひろばのページに保存されています。 過去の入賞作品を見ても、いまでも新しい気づきを与える素材や実践法がたくさん保存されています。 50回をこえた「JICA中学生、高校生エッセイコンテスト」に比べるとまだまだ歴史とはいいずらいのですが、この10年でいまの社会から望まれる役割が見え、それにあわせて形が出来上がってきたといえるでしょう。 それは、長く続いた景気低迷の中で、資源を持たない日本にとって、世界との関係は重要を極め、さらに、ここ数年、アジアにおける領土をめぐる緊張の高まりも加わり、国際社会と日本の関係を主張し協調関係を構築できる人の育成が望まれるようになりました。企業も、大学教育においてもグローバル人材育成は急務といえるようになってきたのです。 「グローバル教育コンクール」はすでに名称においては何を求めているコンクールか分かりやすい名称にかわりました。役割としては、グローバルな人材を幼児教育、小学校、中学校、高校、大学、社会、企業などあらゆる場所で育てるための効果的な「素材」や「実践法」を応募者の作品から選び出し、社会にフィードバックしていくことが望まれているのです。 今年度応募された作品も、取り組み部門においては、「小学生に対し地球の課題を知り、自分ができることをしよう」とNGOの世界一大きな授業から、世界がもし100人の村だったら、難民ワークショップなどを使い、課題を明らかにし、カンボジアの子供たちへのメッセージ発送や、平和のキルト作りの行動につなげる6つの参加型プログラムを作りました。 また、特別支援学校からの実践では、「みんな違って、みんないい」というプログラムを作り、他者と自分を比較し、落ち込むのではなく、人とは違うけれど、自分にも良さがあると自身を持てるような実践が紹介されました。座学では集中力を維持することが難しい特殊性を考慮し「同じ」「ちがう」カードを持たせ参加型に工夫されています。 商業高校の実践では、BOPビジネスを取り上げ、アフリカの学校に通う子供たちにデジタルカメラで現地の写真を撮ってもらい、それを高校生が編集し、ポストカードを作り、日本で販売し、利益をだし、現地に送るという企画を実践しました。 また、NPOからの応募で、アフリカのケニアの子供と日本の子供たちが、同時に大豆を育て、収穫し、料理して食べる交流を実践した。これは、アフリカでの飢餓をなくし、食文化を相互にしり、農業に参加体験することで、生きることを学ぶ機会になる実践でした。これらの例だけでなくまだまだ面白い実践がたくさんありました。 写真部門では、毎回あがってくるのは井戸掘りの援助に関わる写真郡でした。日本のODAによる井戸つくりは、保健衛生に関わり、子供の死亡率を下げたり、子供たちの仕事としての水汲み時間がなくなることによる、子供たちの学習時間の拡大などベーシックだがもっとも重要な課題です。 今回も、日本の伝統技能である上総堀りでの、低予算で自力での技術の活用や、できた後の手洗いの保健衛生指導体制作りや、井戸の維持管理を自分たちで行える持続的な開発を紹介するものが多く見られました。 また、児童労働に関わる作品郡も多かった。今回は、家族が助け合い家の仕事を助ける子供たちの姿に対して、海外の観光地で、真剣な目で、お土産を売る子供たちの姿、また学校に通うためには、家の仕事が終わってから、親の許可をもらわなければ通学が許されない現実を捉えた写真が多くみられました。 他では、ブラジルでの日系社会を比較するものも興味を引きました。現地での鳥居や、豆腐、交番など、日本社会とそっくりなものが存在するのだが、そこには日本の移住の歴史や、日本人の移住者が作り上げた「多分化共生」の姿が写っているように感じました。 このコンクールの今後の課題ですが、学校関係では、小、中、高、大、と、すべての学校から応募があったほか、NPOからの応募があったが、少なかったのは、企業からの応募でした。企業では、商業活動だけでなくCSR活動やソーシャルビジネスとしても、開発途上国への進出は増加しています。そこからの実践例もグローバル教育において欠かせない内容だと考えています。