埼玉県秩父市「橋立鍾乳洞」石灰岩は太古の時代にサンゴなどの生物により造られた



秩父三十四ヶ所観音霊場の秩父札所28番「石龍山橋立堂(せきりゅうざんはしだてどう)」の横には、「橋立鍾乳洞(はしだてしょうにゅうどう)」という全国でも珍しい縦穴の鍾乳洞がある。入口と出口の高低差が約33mもあるのが特徴である。全長は約130mある。1936年には、埼玉県の天然記念物に指定されています。

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洞内は狭かったり細かったりして縦列しないと進めないほどです。また、縦穴の洞内のため道なりのほとんどに上り階段が設けられています。

多くの石筍(せきじゅん)や鍾乳石(しょうにゅうせき)、石柱(せきちゅう、石筍と鍾乳石がつながったもの)が見られる。また、「弘法大師の後姿」などと名付けられた鍾乳石や石柱などがあり、幽玄の美が広がっています。

ところで、石筍や鍾乳石は炭酸カルシウム(CaCO3)の塊である。炭酸カルシウムを含んだ地下水が鍾乳洞内の割れ目から染み出てきます。そして、方解石(組成は、炭酸カルシウム)が結晶として出てきます。これが、天井から垂れ下がり、長い年月をかけてつらら状の石として生じます。このようにして鍾乳石ができるのです。地下水が床に落下し、長い年月をかけてドーム状や円錐状などの突起物が出来上がることもあります。このようにしてできたものが石筍です。さらに、天井から鍾乳石が下に伸び、床から石筍が上に成長していくと、連結し柱状になることがある。これを石柱といいます。

さて、鍾乳洞の中の造形は長い時間をかけて地下水が作り上げたものですが、その元の石灰岩はどのようにできたか知っていますか。実は、多くは、はるか太古の時代に浅い暖かい海だった場所で作られたものなのです。当時浅い暖かい海にはサンゴやウミユリや貝類や石灰藻などの生物がすんでいて、それらの生物により作られた、炭酸カルシウムが海底に堆積し、石灰岩が生成されました。そして、またまた長い年月をかけて隆起し陸地や山になったものなのです。つまり、太古の昔はここは海だったところなんです。しかも、みなさんご存知のように、石灰岩はセメントとなり現在のビルの壁や土台になっています。私たち人間の暮らしになくてはならない身近な素材なんです。そういわれると、鍾乳洞も身近なものに感じませんか。

さらに、考えてみてください。もっともっと昔、地球ができたころの大気には大量の二酸化炭素が含まれていました。(CO2)この二酸化炭素は海に溶け沈殿したり、サンゴなどの生物の力で炭酸カルシウム(CaCO3)の中に固定されたのです。酸素呼吸する生物はそのおかげで大気中の二酸化炭素が減り、酸素が増え生活できる環境が整ったのです。いわば生命が生きていける環境を作り出してくれた岩石なんです。どうですか、そう考えると鍾乳洞は感慨深い場所ですよね。

鍾乳洞の醍醐味は、探検しているような感覚を味わえること。縦穴の洞内で、階段を多く昇るので洞内に入る際には、ヘルメットを着用しなければならない。まさに探検である。洞内へ入ると冷たくひんやりとした空気に包まれるています。夏であれば天然の冷蔵庫、晩秋であれば天然の冷凍庫の中にいるような感覚です。関東圏で鍾乳洞を探検できる数少ないスポット、秩父市橋立鍾乳洞へぜひ一度は訪れて幽玄の美を感じてほしいと思います。

 

埼玉県幸手市立幸手中学校

教諭 齊藤明彦