アクティブラーニングによる国際理解教育



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ankeito

都立瑞穂農芸高校での授業「人間と社会」で「文化の多様性」を考える講演を実施してきました。

話し中心でなくアクティビティをいれた内容で組み立ててほしいということで、「世界がもし100人の村だったら」風にワークショップをアレンジして実施しました。人数は1年生約180名で、体育館で椅子などを使わずに行いました。

アクティビティ1

最新のデータで国別カードを創り、生徒一人一人が別の国の国民となるように配りました。カードには様々な比較データを入れ、標準に話されている言語も書いてあります。そこでまず、自分がその国の国民として理解したうえで、言語が通じる相手を探して、握手をしてコミュニケーションをとりグループを拡げ、話し合おうと呼びかけました。

これは、初めての友達ともアイスブレーキングの意味が大きいですが、言語を使ったコミュニケーションの広がりも実感させます。2か国語を話せる国民がいれば、その人を通訳としてグループを広げることができるのです。

日本語は、世界に一つだけの言語ですから、ほかの国の人とそのままではグループも作ることができません。この体験で生徒たちは、「英語って重要なんだ」などいろいろなことを学んだようです。

 

アクティビティ2

一人あたりのGDPは経済中心の指標で、本当の世界は現わし切れていないという話をして、経済、教育、寿命などを入れた指数としてHDI(人間開発指数)という指数のことを説明しました。いくら国民総生産が高くても、国民の教育や健康に気を配らない国は本当に発展しているとは言えないからです。自分が持っているカードの国のHDI順位に縦に順番に並んでもらいました。これも、周りの人とコミュニケーションをとらないと自分の本当の位置がわかりません。生徒たちは結構頑張って並びました。並んだら隣の国の人たちとロールプレイング(役割演技)でなりきった国のことを話してもらいました。

格差を実感することはとても重要なことです。ここで、世界で暮らす人々の大きな格差について、自分のこととして感じることになりました。これは感想にもたくさん書かれていました。

生徒アンケートより

今回のワークショップでは、生徒アンケートを見ると理解できますが、目を見張るのは、「あなたが生活するこの環境は恵まれていると思いますか」という世界の格差についての理解は、当てはまる、どちらかといえば当てはまると合わせて98%で、しかも、当てはまるが144とほとんどを占めていることからも、ほとんどの生徒が理解したと考えられます。やはりカードを持った自分がロールプレイングとして代理経験をしたからだと思われます。

アクティブラーニングの素晴らしいところは、実際にその国に行くのが一番ですが、それができないとしても、仮想体験で、より現実性を帯びた体験により、定着させることができます。これは、知識注入型の従来教育では難しかったのです。

グローバル教育の手法として、アクティブラーニングは欠かせません。特に高校生や大学生、若い社会人など、グローバルコンピテンシーを診断すると多様性の平均をとると小さく、標準的な位置より低い傾向が見られます。それは当然で、まだ多様な社会を知らない面もおおきいのです。だからこそ、変容の可能性も高いと考えます。高校、大学、新社会人などへのこのようなワークショップの効果は大きいといえます。

生徒感想抜粋(生徒たちは、聞く態度も立派で、180名ほとんどの生徒が「ふりかえり」で感想をしっかり書いてくれました。)

・グラフや自分たちで動いて体験できたのでとてもわかりやすかった。また日本が世界の国々に比べて恵まれていることが再確認できた。これからはその恵まれている環境を無駄にしないで、勉強を頑張っていきたいと思う。

・話を聞いて自分はとても恵まれていると改めて考えた。自分が普通だとおもっていたことが、他国の方、ましてや日本人でさえ普通だと考えない人もいることが分かった。これから生きていくうえで、自分は海外にも目を向け、多くの人と積極的に関わっていきたいと思った。そのために多くの国の言葉も学んでいこうと思った。

・日本って恵まれているなと思っていましたが、今回の話を聞いて改めて感じました。普通のご飯が食べられる、学校に通える、遊ぶことができる…など、普段やっていることを大切にしていこうと思いました。また世界の言語が6000語以上あることに驚き、世界って広いなと思いました。

・今回の講義を聞いて、先進国と発展途上国の所得、教育の格差が、こんない大きいんだと感じた。日頃当たり前のように、嫌でも勉強できるということがとても恵まれていることだと改めて実感した。

・話せる言語で集まるというアクテビティで一つの言葉を話せるより、二つ以上の言葉を話せたほうが、たくさんの人が集まれるということが印象に残った。

・他のクラスの人と交流があったので、今まで話したこともなかった他のクラスの子と話せたのでとても良い機会だった。

・「あなた何語?」といろんな人に聞けたし、周りにいた人たちも「何語の人あっちにいたよ」などといろいろな協力ができたと思います。

・アフリカの理科実験の写真で、器材に恵まれていないのに、空き缶を使い実験をしている生徒の目がキラキラしていて、感動しました。

・印象に残ったことは、黒人の男の子と授業風景の写真です。あんなに男の子が生き生きとして輝いている顔に心を打たれました。

・私は、勉強するのが苦手です。でも勉強をして、分からなかったところを理解できたときの楽しさや、テストで良い点をとれた時の喜びも知っています。何かをやり遂げる、できるということは、どんなことでもやっぱりうれしいもので、たとえそれが生活のためだっとしても、素晴らしいことなのだと感じました。

(斉藤宏)