2月8日大阪のワンワールドフェスティバル会場においてグローバル教育コンクールの表彰式が行われました。
グローバル教育コンクールは今回で11回目を迎えた、独立行政法人国際協力機構(JICA)主催のコンクールです。
このコンクールは世界が抱える様々な問題を自分の問題として考え、その解決のために自ら行動に移すことのできる人材育成を目的としています。
学校教育や、社会においてグローバルな視点を持った教育に活用できる素材や、実践活動や報告の中で顕著な作品に対して表彰し、広く活用の道を開くものです。
応募数は2013年度253作品に対して2014年度は334作品と上昇し2010年度2100作品からの減少傾向が底打ちしたようです。
応募者の、年齢層では20代が38%と最も多く、また、所属では大学生が25%と最も多く、若い人たちがグローバル教育に関心を持ってくれているのは日本の未来にとってとても良い傾向だと思います。
冒頭、主催のJICA広報室からの挨拶では、JICAのアンケートによると20代、30代の認識が低いが、グローバル人材の重要性は日本にとって欠かせないので、グローバル教育コンクールの広報は強めていく、またこのコンクールの成果物を社会一般の方々にも多く活用してもらえるように広報を強めたいと話してくれました。
また後援の外務省、国際協力局政策課からはグローバル人材というと、英語やフランス語などの言語能力ばかりが注目されるが、それだけではなく、多様性対応力やコミュニケーション能力など幅広い能力を持った人材が必要になるだろう、日本人だけが生き残る世界ではなく共に生きる社会を目指す、人材を育てるためにも、外務省もニコニコ生放送なども含め若い人たちへの発信を広げている。外務省が行ったODAに対する理解のアンケートでは、20代の理解が高かったのは、注目しているとのことでした。
作品は写真部門においては、今年の応募要項で動画の作品を無くしたこと、基本に戻り画面上にはキャプションなど説明を重ねず、文字ではなく、写真そのものが訴える力を引き出したことで、静止画像で、多様な問題を表現する、組み写真を十分に活用した構成が多くなり、8枚の写真を有効に使った作品が多かった。格差を表現する比較や、その境遇の中で生きていく背景の表現や、過去と現在を比較して開発のすさまじさを表現するものや、美しい自然の中で風景に溶け込んでいるごみを表現することで、より自然を守りたい気持ちにさせる比較写真など、授業で生徒たちから、多くの気づきを引き出せる作品が集まりました。
応募者には青年海外協力隊に参加した人や、現地で活躍する専門家や教師海外派遣研修で開発現場をまじかで見た人など、海外開発途上国の最前線をよく知る人たちの作品が上位に多く入ったことは旅人の目ではなく生活者の目での作品が多く集まってきたといえます。
グローバル教育を行う場合、実際に行った人でなくても、授業を展開できなければ、教育の広がりは得られないことを考えると、より現場に近い人たちが提示した感動的な作品を使っての教育の効果は、十分変容を引き出せると考えると、このコンクールの果たす意義は大きいと考えます。
取組部門においても、新しい取組として注目されたのが、アジアにおけるろう学生の交流プログラムである。とかく活動範囲が限定されがちな、ろうの青少年たちに、フィリッピンに行きフィリピンのろう者との交流を通じて多文化共生への視野を広げました。
また、校内でなかなか広がらない、国際理解教育や開発教育にたいして、特別な教育を入れるのではなく、現行の教育課程における範囲の中で地球規模の課題をしり、考え、行動することができる場を提供していくことが大切だと考え、教科の中やクラブ活動で自然にグローバル教育に取り組めるような校内プログラムを年間を通して提示し、継続していく実践はグローバル教育にハードルを感じる現場にとって活用できる報告でした。
また、教科学習はもちろん、劇、遊び、歌、言語、絵、表現など、学級経営、全教科、領域すべてにおいて多様性、相互性、有限性、責任制、公平性、連携性などの概念を含んだ活動を続けることで持続的なグローバル教育を展開した実践は、誰でもすぐにできる実践ではないが様々なヒントを与えてくれる実践として評価されました。
理事長賞と所長賞に関しては、新しい取組として、会場の4か所にポスターとして掲示し、その場においてポスターセッションを行いました。これにより、気になる作品に対して、質問や交流を行うことができ、一方通行の表彰式でなく、いわゆる参加型表彰式となり、グローバル教育を進めている人と人の交流ができたことは評価されました。
今後紹介された多くの取組みの成果物を広げ活用できる体制をしっかり作っていく必要が望まれるでしょう。
作品は今後、JICAによりまとめられ活用可能になります。(斉藤宏)