JICA グローバル教育コンクール2015表彰式報告



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JICA地球ひろば副所長江種利文氏 主催者挨拶
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外務省国際協力局審議官 豊田欣吾氏
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表彰の様子
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表彰の様子
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写真部門表彰者
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入賞者プレゼン
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入賞者プレゼン
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入賞者のプレゼンを聴く
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恒例の全員写真
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勉強するのに必要なものって何か知ってる?
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勉強するのに必要なものって何か知ってる?
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平和の傑作集 詩による取り組み

昨年までは、大阪ワンワールドの会場で行われていた授賞式が、今年は2016年2月21日(日)に市ヶ谷にあるJICA地球ひろばで開催されました。表彰式に出席してきましたので報告いたします。

2015年グローバル教育コンクールは今年度で12回目を迎え、写真部門241作品、取り組み部門91作品、合計331作品の応募がありました。

主催者を代表してJICA地球ひろば副所長江種利文氏からの挨拶で始まりました。 JICAは国際協力の発展に努める一方、国内での関心や理解を深める事業にも積極的に取り組んできました。その一つの取り組みとして、グローバル教育コンクールを主催し世界の問題を自分自身の問題として考え、教育現場等で使える素材となる作品を募集してきました。

審査を通じて感じた今回の特徴は写真部門の応募は1/3が高校生だったことでした。国際協力にかかわっているわけではない高校生が、自ら考えて参加応募してきました。このことはこのコンクールの広がりを示していると考えています。高校生たちには今後も社会とのかかわりを深め成長して活躍してもらいたいと期待しています。

続いて外務省国際協力局審議官 豊田欣吾氏からの挨拶では、我が国を取り巻く環境は大きく変化してきました。日本が世界と共にあると認識するグローバル人財の育成は必須になるでしょう。それは、ただ外国語ができるだけではなく、真のコミュニケーションができる人財が望まれます。

国際協力に携わる人たちからは強い熱意を感じます。さらに多くの人たちがかかわれるように、外務省では平成25年に「開発協力大綱」を定めました。国際社会では、企業や地方自治体,非政府組織(NGO)を始めとする様々な主体がグローバルな活動に携わり,開発途上国の開発課題の解決と持続的成長に重要な役割を果たして来ています。

この流れのなかで、グローバル教育コンクールは、グローバルな人財を育てることに寄与することは明らかと考え、外務省としても引き続き支援をして行きたいと考えています。

続いて日本国際理解教育学会 副会長 中央大学文学部教授 森茂岳雄氏から、取り組み部門講評が話されました

違いを認め合う心を育てる「幼児期からの国際理解教育」は保育園での実践で、幼児教育の分野で受賞されたのは初めてではないかと思いました。

1940年、アメリカでのDO testで黒人の幼児に黒人の人形と白人の人形を渡してどちらで遊ぶかを調べた実験が実施されましたが、多くの幼児が白人の人形で遊ぶ結果となりました。その理由は、大人社会の影響とされた。幼児期の大人社会の影響は大きく、その時期にグローバル教育を実践するのは高い効果を上げると思いました。

今年は、国際協力をテーマとした実践が多かったのですが、単なる異文化理解を超えた実践が目立ちました。それらは行動や思考に結び付けていく成果を上げているように感じました。また実践だけでなく実施したことによる評価が重要ですが、ルーブリックを用いての同質の評価を行い実践による変容をとらえグローバル人財育成に活用している取り組みも一歩進んだ取り組みでした。 一方で、世界に目を向けるだけでなく、日本国内での身近な共生問題にも焦点を当てた実践もこのコンクールでは欠かせないテーマで目を引きました。

続いて

NPO法人 全国国際教育協会 常任理事 斉藤宏氏から 写真部門の講評が話されました。

毎回、途上国の学校の写真が紹介されますが、日本の学校の現実を考えると学校現場での「教育環境」と「子供たち自身の取り組み努力」は比例しないことを実感します。

理事長賞の「勉強するのに必要なものって何か知っている」 と入選の「ザンビアの子供たち」では、 狭い教室と先生が近くに感じられるショットは、先生の指導や体の動きを、真剣に見つめる子供たちの真剣な目は環境の整った日本の教師としてはうらやましい限りです。

子供たちの足はほとんどがはだし、壁には手作りカレンダー、教科書に広告の紙でのカバーをつけ、ノートには物理の授業がびっしりと書かれている。(密度の実験のようだ)教育環境が整っていなくても、学びを望む気持ちがあるとこうも違うのかと考えさせれました。

また、同じ視点でじっくりと生活を記録した作品は 、ひろば所長賞のニカラグア 「ぴかぴかの靴と僕の手」 と入選のマラウイ 「物の運び方編」でした。 ぴかぴかの靴に対比される真っ黒な自分の手やボロボロで汚れた自分の靴を比較表現して見せてくれました。 また頭になんでも載せて運ぶ生活習慣を追いかけているのですが、明るく、美しいアフリカの自然の中で、現地に身を置き長い期間をかけていろいろなものを運ぶ姿を撮りため、表現してくれました。これらは当たりまえに家の仕事を手伝いこなしている現地の子供たちの姿であり、ぜひとも日本の子供たちに見せたい作品でした。

組み写真ではそれぞれの写真がテーマでつながっている必要があります。とりあえずバラバラに加えてしまっている作品はマイナス評価になります。 前に募集していた「ビデオ部門」は素材より技術の差が出すぎるのでやめた経過がありますが、その分、写真で時間経過を表したり心の動きを様々な画像から探れる作品こそ高い評価を得られるでしょう。

審査を通して毎年、レベルが上がっていると実感します。さらに対象が広がってきていることがとてもうれしく感じます。グローバル教育は日本にとって、今こそ必要とされる教育ですが、学校だけでなく社会と共に取り組む必要があります。このコンテストの特徴はエッセイコンテストのように中学生、高校生だけでなく、生徒も、教師も、社会人も、家庭でもだれでも取り組めるコンテストだということで、中学生、高校生だけのエッセイコンテストと比べればさらに広がるポテンシャルを持っていると考えています。

しかも、グローバル教育コンクールの成果物はそのまま日本のグローバル化へのツールとなることを考えれば、まさに持続可能なシステムを持ったコンクールであり今後とも参加したみなさんの力でさらに広げて行けると良いと考えています。

最後に

審査委員長の日本学校教育学会前会長 目白大学人間学部学部長 多田孝志氏から全体講評をいただいきました。

今年のグローバル教育コンクールの位置と今後の展望を考えてみました。まさに、広がりと深まりの端境期といえるのではないでしょうか。豊かさとは何か、深まりとは何か、これからのコンテストにおいては、この成果を生かす教材化が必要だと思います。

コンクールの成果は社会の受益者たちにとっては世界の人々の、単なる知るを超えて喜びを育てる実践になるでしょう。

また一方で実践者側に立って考えると、このようにJICAのコンクールにより褒賞する意義はとても大きいと思います。実践者の現場における孤独感は、認められることで大きく変わるでしょう。

講評では触れられていない中からユニークな取り組みをいくつか紹介します。

平和の傑作集(写真1番下参照)では小学5年生の子供たちがネットで集めてきたアフリカの写真等を見て、その写真が表していることを、グループで考え詩で説明をつける。1年間で10冊の手作りの本を作り上げた、ユニークな実践でした。

・商業高校の取り組みでは、 7年目のフェアトレード活動の継続の経験を活かし、フイリッピンのネグロス島のマスコバ糖を商品と決め、SWOT分析を行い、商品開発や販売に向けて、地域の会社と協力してカステラやプリンを開発し進んでい来ます。生徒たちはアンケート分析からフェアトレードだけでは解決できない問題にも気づいてくる。実践しながら評価し問題を解決していく実践は、参加者の成長を促す成果にもなるでしょう。

「PBL版国際協力入門」は、高校生でありながら、タイでの研修、テレビ会議、グローバル企業との連携、自分の世界を広げる活動に焦点をあて、PDCAサイクルを活用し、プロジェクトベースで現地の問題を解決する中で、問題解決能力の育成を行っている等、まるで専門家のような実践もでてきました。

詳しい作品は、今後JICAのホームページで発表されますが、今回の報告を読んで、皆さんもレベルの上昇を感じるのではないでしょうか。多田先生の講評にもあるように、今年はまさに端境期で、ここから量も、質も大きく変化していくような気がしてなりません。

何度も言うように、このコンクールには誰でも参加できるというポテンシャルを秘めています。しかも成果物はそのまま、教材として活用できることで、まさに、グローバル人財育成プログラムとして「持続可能なシステム」を形成しているのです。(報告 斉藤宏)