高校生が考えた小学生向けアクティブラーニング



P2262933
発表会の始まり
P2262937
国カードから外国の料理を選び出すゲーム
P2262946
料理が正解したら、その国の場所を地図であてる
P2262954
バーチャルウォーターの存在を理解してもらうゲーム
P2262958
カードの表
P2262959
裏は使われたバーチャルウォーターの量が書かれている
P2262972
世界の水事情ゲーム
P2263004
ファストファッションの裏側

東京、自由が丘にある、玉川聖学院の高校2年生の「国際教養」の授業を見せてもらいました。

玉川聖学院の教育目標には、「違っているから素晴らしいという発見」が入っており、グローバル化にとって重要な多様性の成長を促している学校です。

この1年間、校内3人の先生によるチームでの指導に加え、外部講師による講義もふんだんに取り入れ、生徒たちが自分たちで小学生向けの教材を開発できるように続けてきたようです。本日が本年度の授業のまとめ、最終発表会ということで、見学させていただきました。 生徒たち自らの教材開発の発想が創造的で興味深く、いくつか紹介させていただきます。

対象と想定する小学生たちにはまだ海外の料理と国が一致していないので、外国の食文化から興味を持ってもらう教材です。写真のようにおいしそうな海外の料理のサンプルを手作りでたくさん作り、ゲーム形式で、引いた国カードに書いてある特徴を読んでからその料理をトレイに載せるという設定です。正解したら、さらに世界地図からその国を探してもらいます。トレイまで作ってある配慮が素晴らしいですね。

次の写真は、水問題でバーチャルウォーターを理解してもらう双六のようなゲームです。進む目を決めるルーレットも手作りでなかなか完成度はたかいです。進んでいくたびに、「ジーパンを一着買う」というようなカードをもらいます。ゴールするまでは裏は見ないのですが、ゴールした後に裏を見るうと、「ジーンズ1本で1リットルペットボトルにして約10855本」必要だと書いてあります。もらったカードのバーチャルウォーターをトータルしたときに、どれだけ水を使ってきたのかがわかり、その量に驚くことになります。ちなみに、牛丼一つ食べると、牛が育つために食べた草が吸収した水や牛が飲む水や、輸入してくるために燃料を使うための水等ペットボトル2000本分必要だそうです。最近話題のバーチャルウォーターの問題をゲームを楽しみながら、最後に驚きの気づきを与える仕組みがとてもよく考えられています。

次も水問題ですがこちらはバーチャルウォーターではなく世界の水の現状を知ってもらう双六で、止まった場所に、「アメリカでは観測史上最悪の干ばつでマイナス4」と書いてあると、手持ちの水を4杯取られる仕組みです。最後に参加者の手持ちの水が多く残った人が勝ちです。途中にはクイズタイムもあり。水事情をゲームを楽しみながら理解できるようになっています。世界地図がわかりやすくカラフルで、それぞれの国の課題を良く調べてあり全体としてコンパクトにまとめられているところがいいですね。

最後の写真はファストファッションの裏側を考えるプレゼンです。AとBのお店があり、みなさんはどちらで買いますかという質問で続けていきます。Aは安い、Bは高いそこでみんなに聞くとAで買うという人がほとんどです。ところが次々と情報が出てきます。Aは地球を汚しています。Bは環境に優しいです。Aは労働者を酷使しています。Bは社員を正規採用しています。さてどちらで買いますかと聞きなおしていくと、だんだんBで買うという人が増えていきます。ファストファッションが安く売られているのは、悪い材料を使い、労働者を酷使し、排出物をそのままだしていることで値段を抑えていることが理解できる仕組みです。プレゼンターの進め方がうまく考えられたシナリオですすめられ、ポイントのフレーズが出ると、「教えて〇〇ちゃん!」と呼びかけ〇〇ちゃんが解説をするという設定には、聴いている人たちが引き込まれるほどの出来でした。楽しく学べるのに越したことはありませんよね。

どうですか、目的として「小学生に教える」ための教材を考えるという設定がいいですね。ラーニングピラミッド(アメリカ Trainig Laboratories,The Learning Pyramid)においても「人に教える」実践はピラミッドの最も大きい底辺で、学習定着力を高めることは明らかです。またどの教材を見ても図や色の使い方がカラフルでモノづくりも手を抜いていません。楽しめる雰囲気が満載です。発表者のプレゼンの技術も物怖じせず、対象者をしっかり見ながら発表していて、1年かけて内容を考え自分たちの学びを本当に自分たちのものとして身に付けたからこそできた発表だと思いました。アクティブラーニングは時間がかかりますが、従来型の教師中心の受け身の学習法に比べて、参加、体験することで、知識の定着だけでなくコンピテンシーの変容も期待でき、効果的な学習法になると感じました。さすがに各学年でグローバル教育に力を入れている学校の生徒だと思いました。高校2年生ともなるとここまで成長するのですね(報告 斉藤宏)