第2回グローバル教育の集い
第2回グローバル教育の集報告
2012年12月15日 (於) 拓殖大学
主催 グローバル人財リサーチ(準)/拓殖大学国際開発教育センター
協賛協力 株式会社メディア総合研究所
後援 外務省、独立行政法人国際協力機構(JICA)、財団法人日本国際協力センター(JICE)、公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)、財団法人国際協力推進協会(APIC)、NPO法人全国国際教育協会
この集いは『共に生きるをデザインするグルーバル教育』出版を契機に6月9日に開かれた第1回グローバル教育の集いを一歩進め、日本の教育に「グローバル教育」をひろげ定着させるため、その方向性を共に考える目的で呼びかけました。
当日は雨が降り、足元が悪く、事前の広報もあまり時間が取れなかったため、人数的にも期待はできなかったのですが、結果、当日参加者まであるという嬉しい事態になりました。グローバル教育に対する社会の要請の強さを感じ主催者側としては嬉しい限りでした。
第1部はグローバル教育シンポジュウムでした。
開催挨拶を拓殖大学国際開発教育センター長 甲斐信好教授からグローバル教育への期待を話していただきました。
実践報告では、
目白検研心中学校・高等学校教頭の吉田直子先生から「中高教育現場におけるグローバル教育」として、テレビ東京で放送された「地球VOCE」の撮影日の授業の報告をしていただけました。女優、藤原紀香さんのナビゲーターで紹介された、目白大学の多田孝志教授による同校高校2年生の授業です。
日本の食糧自給率をテーマに、自給率を高めるためにはどうしたら良いのかを、共同の学びの中で参加型手法を用いて共に考え解決策を考えて行く実践の報告をしていただきました。
第2部は分科会
分科会① 拓殖大学 客員研究員 斉藤宏氏
最初に 「グローバル教育の概念と推進」について考えました。
●関わりのある教育
国際理解教育(Education for International Understanding)
開発教育(Development Education)
ワールドスタディーズ(World studies)
グローバル教育(Global education)
多文化教育(Multicultural Education)
国際教育(International Education)
1974年から(ユネスコ総会で国際理解教育を呼び変えた)ESD(持続可能な開発のための教育
●定義は
「グローバル教育は、世界の現実に対して全ての人々の眼と心を開かせ、全ての人のためにより大きな正義、平等、人権が必要であることへの気付きを促すこと。グローバル教育は、開発教育、人権教育、持続可能な開発のための教育、平和と紛争防止のための教育、異文化間教育などを含み、市民教育のグローバルな側面を表している。」*2002年 マーストリヒトにおいて出された宣言 欧州グローバル教育会議
つまり「地球的課題の理解と解決のための世界規模の教育運動」方法として「アクティビティを重視する参加・体験型学習」と考えられているようだ。
●日本でグローバル教育やグローバル人材が求められる理由
・地球規模の課題解決が目的→環境、平和、人権、多文化、貧困、健康、ジェンダー、教育、資源、食糧、人口など、具体的に日本でも問題・課題となっているものが多くある。
・帰国生徒、外国人労働者の増加→違う文化、アイデンティティーにどう対応するか
・円高による企業のグローバル化→ 相手国への理解
・国際的な輸出、輸入の増加→ 市場の国際化相手国との相互依存、TPPの問題
・地球環境変動の進行→ 地球温暖化、気象現象の巨大化、被災に立ち向かう防災、減災教育
・格差の広がりによる貧困の増加→皆中流意識の変化、富裕層と貧困層
・情報通信(IT)の発達により誰でも世界の情報に接することができる→インターネット、TV
・交通の発達が人の交流をたやすくした→外国の方と日本にいながら直接交流
・学生の内向き志向→留学生数の減少
●課題解決のために社会でグローバル教育、グローバル人材に求められている力
多様性、英語力、目的性、即戦力、タフネス、行動力、課題解決能力、リーダー性、対話力、アイデンティティー
●グローバル教育の手法
従来の教育方を、「知識注入伝達型」とすると、グローバル教育では、アクティビティを重視した「参加体験型」といえる。リアリティーを追求する。
学習者一人ひとりの多様性を尊重し、対話を生み出す。知見を注入するのではなく、学習者は解決法に近づく体験が心の内面に変化を獲得していく。
教師は、ファシリテーターとなり、気づきを引き出す役目に徹する。
●これからどう動くか
・研究活動
グローバル人材育成の実践化のための開発研究場「グローバル人財リサーチ」(関西をはじめとした全国との連携)
・実践活動
指導者育成→ ファシリテーションコース(拓大) 、
指導者派遣→ 社会で実践。出前授業やセミナーを地域で行う
関連書籍出版→ 社会教育や家庭教育
この後、PCM(プロジェクトサイクルマネジメント)の手法を使ったワークショップが行われました。
テーマ:「被災地の子供たちの教育」
A,B,C3グループに分かれ、関係者分析、問題分析、目的分析を行いプロジェクトを形成してもらいました。
さすがに、参加者は各分野の最前線で活躍している方が多く、時間が短い中でも面白いプロジェクトを形成してくれました。
A;みんなを守れる防災教育プロジェクト
B;子どもたちの再出発プロジェクト
C;山田町ミラクル活性化プロジェクト
地域のコミュニティを掘り起こしたり、感謝の気持ちの手紙を書いたり、村のイメージの絵を書いてもらったり、郷土料理を子どもと一緒に作る、秋祭りを子どもたちと盛り上げる、カフェ運営、フェースブック、ツイッターでの発信、交流の場づくり、姉妹都市との関係づくり、カウンセリングが行きわたるシステム作り、運動会、ハザードマップ作り、先生の研修、副教材づくり、体験を伝える試みなど、次々と面白いアイディアが出てきました。
評価のための指数としては子ども向けアンケート、住民参加率、自殺者ゼロ、人口増、子どもたちのリズムある生活が戻ったか例えば勉強時間の増加等プロジェクトが客観的に評価できる指数も考えてもらいました。
もう少し時間があれば素晴らしいプロジェクト形成が完成したでしょう。
分科会② (株)メディア総合研究所 福田訓久
テーマ:ESD授業づくりワークショップ
◆本ワークショップのねらいと目標の説明
本ワークショップの参加者は、全員「教育に関心がある」ことを挙手にて確認した後、本日のねらいを共有。ワークショップ終了時には、何らかの授業案の基礎ができていること、および各自が参加型グローバル教育を体験したと実感できていることが目標。
教育現場で、このような授業を実践する際に気になるのが「学習指導要領」である。ここでは、「先生方が胸を張って授業ができるように」と、全教科に散在しているキーワードが提示された。
・言語活動の充実
・探究学習
・自己との関連(つながり)
・持続可能
・思考・判断・表現力のバランス
◆学びの方法
知識詰め込み型ではない教育において重要なのは、学習方法である。本ワークショップのように、グループ学習の形態は非常に効果を発揮する。自分の意見が言えた。他者の意見が聞けた。皆で何かを作った。という「小さな成功体験」を積み重ねさせてあげたい。
◆映像教材について
「異なるもの」との出会いを映像を通して行う、という提案。授業で使用する映像素材を大別した図が提示された。
私たちは、常にどのような映像をどのように使用するかを意識する必要がある。なぜなら、それらによって「知識型授業」にも「主体的参加型授業」にもなり得るからである。
~~ここからワークショップに移りました。~~
◆紹介カードを使ってメンバーを知ろう
名前、所属、ニックネームなどを紙に書き、グループ内で共有
◆授業案をつくる前に、まずは現状の共有から
1.ESDを進めるにあたって、大切にしている、大切にしたい視点は何ですか?
2.ESDを進めるにあたって、課題となっていることはどのようなことですか?
◆グループで出し合った現状をキーワードにまとめ、画用紙に箇条書き
グループA; 「大切」
・自分を知る
・自発型
・気づき
・自分の問題として考える
・多角的な視野
・協調、協力
・楽しむ
・栄養
グループA; 「課題」
・一方通行
・時間が足りない
・指導者、担当者が少ない
・テーマ選び
・結果が見えにくい
・お金が足りない
・社会的認識が低い
グループB; 「大切」
・行動力、実践力
・自分の意見
・多角的視野
・先見性
・共生
・情報収集能力
・問題点の共有
・他者への思いやり
グループB; 「課題」
・自分の意見をしっかり言えない
(児童生徒が多い)
・クローズエンドからオープンエン
ドにすること
(正解がひとつではない授業づくり)
◆ユネスコ・アジア文化センター制作映像教材
『ミナの笑顔』視聴
◆具体的な授業案づくり
「授業は質問で決まる」といっても過言ではない。何を問いかけるかが重要である。投げかける質問によって、生徒がより「正解」を予測した答えを考えることにもなり得るし、一方でより自由な発言を引き出すことにもなり得る。
そのため、このセッションでは下記のような視点がファシリテーターより投げかけられた。
・グループ内で決めたテーマにそって授業をする際、生徒に投げかけたい質問にはどのようなものがありますか?
グループA
テーマ; 非識字状態
質問①「非識字状態になったら?」 →想像してみよう →幸せか不幸かディスカッション
質問②「非識字状態になった原因は何?」
質問③「非識字の状態を日本の今の格差に結びつけて考えると?」
質問④「学んだことを実際の行動に結びつけるには?」
グループB
テーマ; 幸福(豊かさ)とは?
質問①「ミナは幸福になりましたか?」
質問②「ミナは幸福になるためにどの位努力をしたと思いますか?」
質問③「教育を受ける意味は何だと思いますか?」
こちらの分科会も、積極的な参加者に助けられて、とても充実したものとなりました。引き続き、ESD教材の作成に取り組んでいきたいと思います。
第3部 全体会 グローバル教育まとめ 宮古島実践報告 ふりかえり
第3部では全体会に戻り 各分科会の発表と目白大学の多田孝志教授にグローバル教育をまとめてもらいました。 進行は拓殖大学の石川一喜先生にお願いしました。石川先生が「ふりかえり」として、分科会相方の参加者から内容を詳しく引き出してもらい、分科会に分かれていて、他の分科会で行われたことを共有することができました。 そして、最後に、多田孝志教授によるグローバル教育の位置と目指すものをまとめてもらいました。 この中で、21世紀の学校教育の使命として、子どもたちの抱える問題や今後生きていく時代や世界を踏まえた教育の必要性が指摘されました。 方向性として 理念は 未来志向性、異質との共生、視野の拡大、多様性・関係性・可変性 調整力として 全人的見方(知性と感性)、知から智へ、主体的行動力 として「智の創造」知(Scientia)を超えた智(Sapientia) 対話を可能にする知性を創造する。 まとめとして「自律協同探求学習」という考え方でそれは他律と自律のスケールと探求と伝達の4つのスケールの中での位置を認識することだと指摘されました。 最後に、先生が取材された宮古島の高校生たちが、地下水保全を目指して研究し廃糖蜜を使って肥料をかえ、地下水を守る提案を実践し、従来農薬や化学肥料を使っていた地域の考え方を全く逆に変えた活動が世界でも認められた感動的な実践例を紹介してくれました。 ※ご希望の多かった、多田先生のプレゼンのPDFを配布いたします。
参加者アンケートによる参加者の感想まとめ
参加者の感想
・ いろいろな関係の人が集まり、普段は話す機会のない方とブレインストーミングができて良かった。
・参加者の所属が様々で新しい観点や情報を得ることができたし、①分科会でじっくりと対話する時間があり有意義な集いだった。
・②分科会ESDをどう授業の中で行うかという視点で気づきになりました。ESDが社会や英語だけでなくすべての教科で行われるように考え て行きたいと思いました。
・①分科会で家庭内教育の重要性を指摘していましたが、非常に大事だと感じました。
・大変勉強になり啓発を受けました。多田先生の講演には感銘を受けました。グローバル教育は日本の課題であると思います。
・グローバル教育は現役教員、協力隊OB等に参加者は広がってきたと思います。赤石先生も指摘された、民間企業の開発への参加が不可避の時代となってきました。むしろODAは2割弱の力です。民間で進めるグローバル教育が欠かせないと思います。
・グローバル教育の目標、方向性は明らかになったが、実践の部分はまだよくわからない、多様なアプロ ーチがあると思うので今後もっと経験していきたい。
・広報が弱く、タイムマネジメントが相変わらず下手、でも楽しかったです。
・多田先生の宮古島農林の高校生の話は鮮烈でした。
・①分科会のPCMの実践は学びとなりました。現場に持ち帰って使えそうです。
・小中高の教員のグローバル化推進に最大の関心を有しています。子どもたちのグローバル化には大学の教員養成課程の変革や、現職教員の研修、育成が必要です。
・①分科会でPCMの手法久しぶりに体験しました。時々、小中高大学生に話しをしますが、話しっぱなしなので、PCMの手法で行動を引き出したいと思いました。
・本校においてもグローバル教育を取り入れていくにあたり参考になりました。
・いままでグローバル教育は実践していないので場違いな気がしていましたが、参加してみて身近に感じられました。
・3部構成で時間的には制約がありましたが、参加型で活動、発表の機会があり満足度が高かったです。また全体としうまくまとまっていました。準備は大変だったと思います。
・海外教育から始まって、国際理解教育、国際教育、開発教育そしてグローバル教育と関わってきましたが時代の流れを感じます。①分科会でのグローバル教育の話を聞いて理解が深まりました。今後現 場でどのように展開していくのかが課題ですね。
.・さまざまな立場の意見を聞くことができて大変良かったです。
・グローバル教育に関連する動きとして。インド発の教育運動 Design to Changeの日本版が立ち上がりました。
・ESD等、今までの教育とどのように違うのかまだすっきりしませんが、多田先生の全体総括は目からうろこで共感できました。
・留職ということばは初めて聞きました。1企業に勤める身としてはこの活動が活発になって、企業も途上 国もwin-winの関係になればと思いました。多田先生のプレゼンに感銘を覚えました。自発的に物事を考える人が少しでも増えれば良いと思います。
・②分科会で学校の教員の方がどのような考えをお持ちか少し知ることができました。教員養成課程の 向けの授業が実践されると良いと思いました。
・地球VOCEの番組では子どもたちが活き活きとしていたこと、「人の話を聞くだけの授業よりもずっと頭 を使った」との感想から参加型手法の効果を現わしていると思いました。②分科会では問いの大切さを改めて気づいた。問いの投げかけによって生徒の反応、考え、自発性が異なることに気づいた。また、幸せを考えることがひとつのキーワードになると思いました。
・②分科会においてESD、グローバル教育について深く考えることができました。
・②分科会において、福田先生のキャラクター、弁舌のさわやかさに時間のたつのも忘れました。
・①分科会において、PCM手法に興味を覚えました。物事を論理的かつ系統的に考えるための手法として最適と考えました。学習者の思考、判断のプロセスを教師の側が道筋をつけて行くのに役立ちそうです。
まとめ
1部から3部まで、4時間を超える大変長い集いでしたが、途中から帰ってしまう方も少なく、熱気あふれる集いでした。参加者を見ると、各所属の中でコアとなる人が多く参加していて、その方たちのグローバル教育の動きを広げたいという気持ちが集まったと感じました。準備が報われた気がします。
これで、「秋葉原会議」は「グローバル人財リサーチ」(準)へと進化をし、学問的研究と並列にアクションプランを提起していきます。
今回、参加してくださった方のアンケートでも、お聞きしたアクションに関わってくださる人も多く見えてきました。今後は動きをglobalml(グローバルメーリングリスト)で知らせ、関われる方のすそ野を広げていきます。ぜひとも、協力してください。